元銀行員の苦悩

元銀行員。読んだ本のこと、仕事のことについて書ける範囲で書いていきたいと思っています。

本の未来

ついに電子書籍を買ってしまった。

正直、電子書籍はいけ好かないと思っていたので、買うつもりはなかったのだが、部屋の収納スペースの問題、また、使ったこともないのに電子書籍についてとやかく言うのもどうかと思ったので今回購入を決意した。

 

今日はちょうどいい機会だと思ったので、本の未来について私の考えを少し書きたいと思う。未来というと少し大袈裟な気もするので、「紙の本は無くなるのか」というテーマに絞って書いていこうと思う。

 

さて、電子書籍が登場してから随分と時間がたった。「電子書籍元年」と叫ばれたのは今から6年前の2010年。だが、結局その年に電子書籍はなかなか普及しなかった。電子書籍大国のアメリカでは「書店が遠い」という地理的な理由から電子書籍が普及した側面があるが、全国津々浦々に書店がある日本ではそれほど本へのアクセスに困らなかったというのが大きな理由だろう。しかし、2012年あたりからタブレットの普及などに伴い電子書籍の売り上げが伸び始める。出版業界の売上高が年々落ちているのに対し、電子書籍の売上高は年々伸び続け、現在では出版業界の売り上げの約10%が電子書籍だと言われている。このまま紙の書籍は電子書籍に飲み込まれてしまうのだろうか。

 

結論から書こう。

私の意見では紙の本は無くならない。

しばらくは電子書籍が伸びる状況が続くと思うが、電子書籍市場占有率は伸びても30%くらいだと私は予測している。現にアメリカでは順調に伸びていた電子書籍の売上高が市場占有率20%を超えた時点で失速している。

 

様々なコンテンツがデジタル化された現代で、なぜ本は現在の形を保っているのだろうか。その答えは本を読むという行為そのものにあると私は考えている。スマートフォンやPCが普及している現在では、多くの人がデジタルという鎖に否が応でも縛り付けられてしまっている。いつ来るかわからない友人からの連絡や、ふとした時間にチェックできるSNSやアプリケーションなどデジタルのスイッチを切るのはなかなか難しい。しかし、本を読むという行為はデジタルから切り離された行為だ。目の前にある本に没頭している間は、デジタルの呪縛から解放されることができる。電子書籍ではなかなかそうはいかない。

 

デジタルは非常に便利なものだが使いこなすのは非常に難しい。たまには距離をとらないと支配しているつもりでも支配されてしまう。そういった意味でも紙の本は貴重な存在だ。紙の本は現代に残されたアナログ最後の砦なのである。その砦を我々は失ってはならない。